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手袋単複問題 A Pair of Gloves / Gloves [文法問題]

えーと、前の記事「キッドの手袋 Kid Gloves and Kid Mittens [Daddy-Long-Legs]」を書いたあと、電車に乗ったり人としゃべったり(ぜんぜん関係ない話で)人の顔を見たり電車の中で化粧をするとなりの人の手を見たりして、思ったのですが、もちっと、英語の文法問題を考えてみたいと思いました。

Do you want to know something?  I have three pairs of kid gloves.  I've had kid mittens before from the Christmas tree, but never real kid gloves with five fingers.  I take them out and try them on every little while.  It's all I can do not to wear them to classes.  (Penguin Classics 18)
(おじさまにいいことをお知らせいたしましょうか? わたしキッドの手袋を三足持っておりますのよ。前に、キッドの指なし手袋(ミットンズ)はクリスマス・ツリーのをもらったことがありましたが、五本指のほんとのキッド手袋ははじめてです。ひまさえあれば、出してはめてみますの。教室へはめて行きたくてたまらないのですけれど。〔中村佐喜子訳、旺文社文庫、27ページ〕)

  ふたつめのセンテンス、"I have three pairs of kid gloves." はまことに文法的に手袋3組を言い表しています。前の記事に書いたように、Oxford Dictonary of English (2005) を見ると、"(usu. mittens)" 〔つまり、通例複数形〕として "a glove with two sections, one for the thumb and the other for all four fingers" というふうに書いています。でも、あとから思ったのですけど、ミトンだから通例複数形になるわけでなく、靴下にしても靴にしてもふつうの手袋にしても、さらには日本人にはわかりがたい感覚で、パンツとか、メガネ(これはわからなくもないが)とか、ズボンとかスラックス(半分死語)の意味としてのパンツはともあれ下着のパンツ/ティーズみたいな複数形=1個、あるいは "a pair of なんたら~" みたいな。

  ま、英語は不便だなー、と言ってしまえばそれまでなのですけれど、ワタクシ的には、いったいキッド(ほんとの子ヤギ革)の手袋を、入学直後にジュディーは何組もっていたのだろう、というのは気になるところであるのです。

  4番目のセンテンスでは "them" で、"kid gloves" を受けて、でも3組すべてなのか、"real kid gloves with five fingers" なのか、そして後者だとしても何組なのか、不明です。そもそも "real kid gloves with five fingers" と書かれたときに(つまり "pair" というコトバを使わず書かれたときに)、何組かわからんのです。

  ジュディーは作品導入部の「ブルーな水曜日」 (Blue Wednesday) で、あしながおじさんと同じ理事と思われる(まー教育委員会みたいなところから出てきている人らしけれど)プリチャードという女性に「ブルーな水曜日」という題の作文を認められ、理事の前でそれが朗読され、あしながおじさんの耳にとまって大学にいくことが決まったということが語られるわけですけど、このプリチャードが大学進学に必要な品々を準備してくれる、ということもリペット院長は語っています。ですから入学前に(つまりとりわけクリスマス以降あらわになるような、あしながおじさんのプレゼントの前に)ジュディーは身の回りの品々(具体的には主として服飾品)を携えて寮に入ったことは了解できるのです。じっさい翌月の11月の手紙では、3つドレスを持っていて、みたいなことをジュディーは語っています。ですから、高級手袋を、まー、2つや3つ、ミス・プリチャードが揃えてくれてることも考えられなくはない。

  で、文法問題がですが、1個(1組/1足)の手袋でも、やっぱり gloves と複数形になりますね。だから、「ひとつ」(ひとくみ)の手袋でも "them" で受けられます。

    しかし、そういうことも含めて、たぶんウェブスターは遊んでいるのではないか、と思われるのでした。(前の記事ではっきり書きませんでしたけれど、自分の読みが正しければ、最初の  "I have three pairs of kid gloves" は、(翻訳のいくつもが「も」をつけて訳しているように)、三つ「も」もってるんですよ、という匂いを漂わせておいて、そこから孤児院時代の過去にさかのぼってクリスマスのミトンの手袋の話をして笑かす(泣いてもいいけど、まー、ここは泣けないかと思います)、という展開なのではないでしょうか。

  以上、酔って帰ってきて書いているのですけれど、実は前から気になっている文法問題を新たな「マイカテゴリー」とすべく、マイッカ的なはじめとして書かせてもらいました。まじでわからん英文法の問題があるのです(つーか、とりあえずでも100パー「わかる」のを「問題」と少なくとも醒めた自分は呼ばないのだけれど)。

  予告的に書いておくならば、ジュディー=ジーンは、英語の、文法問題といっていいのでしょうが、について『あしながおじさん』のなかで疑問を投げかけているところが二箇所はあります(酔ってきっぱり)。しょうがについて書くつもりはないですが。

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「gloves - 英和辞典/和英辞典」 <http://jp.wordmind.com/ecmaster-cgi/Jsearch.cgi?kwd=gloves&bool=and&word=im> 〔用例集〕


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彼/彼女の、彼(女)の、彼または彼女の、モノ He/She; He or She; (S)he; His/Her; His or Hers; His (Her); His/Hers; His (Hers); His or Hers [文法問題]

『あしながおじさん』3年生6月10日の手紙でジュディーが触れる英語の代名詞問題について――


                                                       June Tenth,

Dear Daddy,

This is the hardest letter I ever wrote, but I have decided what I must do, and there isn't going to be any turning back.  It is very sweet and generous and dear of you to wish to send me to Europe this summer―for the moment I was intoxicated by the idea; but sober second thoughts said no.  It would be rather illogical of me to refuse to take your money for college, and then use it instead just for amusement!  You mustn't get me used to too many luxuries.  One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are his―hers (English language needs another pronoun) by natural right.  Living with Sallie and Julia is an awful strain on my stoical philosophy.  (Penguin Classics 105: 太字強調付加)
(これはこれまで書いたうちでいちばんしんどい手紙ですが、わたしは自分がしなくてはならないことを決心したので、あともどりすることはできません。この夏わたしをヨーロッパに送りたいと望んでくださることは、たいへん親切で寛大でありがたいことです――しばらくわたしは欧行の思いに酔いしれました。しかし、あらためて醒めた頭で考えると、これはちがう、と思いました。大学へ通うお金を受けるのを断りながら〔このことばは、2年生の終わりに、食費および授業料を含む2年間の奨学金を受けたことでアシナガオジサンとやりあったことを引きずっています〕、あなたのお金を今度はただの娯楽に使うなんて非論理的なことでしょ! わたしをあんまりたくさんの贅沢に慣れさせてはいけません。ひとはだれも、手にしたことのないものは、なくても不自由することはありません。でも、一度、ひとがこれは生得権みたいに彼の――彼女の(英語という言語はもうひとつ代名詞が必要)――ものだと考えはじめたあとではそのモノなしにすごすのはすごくしんどくなります。サリーやジュリーと一緒に暮らすのは、わたしの禁欲哲学にすごい圧迫です。)

  英語に必要な代名詞とはなんでしょう。と問いを進めたいところですが、じつは最初からつまずきます。それは、既訳をいくつか並べてみてもわかることだと思います。――

ですけれど、いったんそれが生来の権利として彼の――否、彼女の(英語は人称別がいりますのね)物であると考えてからですと、そういうものなしで暮らすのはとてもつらいのです。 (遠藤 (1961) 118-119)

ところが、いったん何かを手にいれて、それが当然かれの――または彼女の(英語には、もうひとつ人称代名詞がいりますね)ものだと思いはじめたが最後、それなしでやっていくのは、なみたいていのことでなくなるのです。 (坪井 (1970) 194-195)

けれど、一度、それがじぶんのものになったりすると、それなしでは、くらしにくくなるものではないでしょうか。 (白木 (1970) 147) 

けども一旦それが彼の、彼女の――英語は一々別代名詞が要るんだから厄介ね――ものだと思ふやうになつた後で、さう言ふもの無しに暮さうと思ふともう苦しくつて仕様ががないものよ。 (東 (1929) 177)

  いくつか可能性は考えられると思うのです。

a)  his と書いたけど、hers というもうひとつの ("another") 代名詞が必要とされる。

b)  his と書き、hers と書かねばならないのは不便なので、もうひとつ別の、これとちがった ("another") 代名詞が必要ではなかろうか。

  わからないのは、所有代名詞として one's がないか、というと、あります*。ですから、"One" ではじめたこのセンテンスを one で一貫すれば(一貫するのはアメリカ的といわれますけれど)すんでいたのではないでしょうか?――

One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are one's.

  中学校の復習的には、こういうやつです。――

I my me mine
we our us ours
you your you yours
he his him his
she her her hers
they them their theirs

  この、呪文のように唱える代名詞の活用があるわけですけれど、それぞれの最後のやつが possessive pronoun 所有代名詞です。で、

one one's one one's

  ありです*。

  3月19日朝追記。「あります*」「ありです*」、と書いたのは、文法書をひもといて確認したのではなくて、日本語ウィクショナリーの "yours" 掲載の表を見て、ふーん、あったのか、と思ったしだいです――<http://ja.wiktionary.org/wiki/yours> 。 でも「所有格代名詞」(これもうっかりそこからとりました)という呼称も「所有代名詞」という書き方とのあいだで揺れていますし、信頼できるかどうか不安になりました。いずれにしても稿をあらためて考えることにします。

 

  つづく~(解答暗中模索中)

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"Gender-neutral pronoun," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/He/she> 〔残念ながら対応日本語記事なし〕

"Singular they," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Singular_they> 〔残念ながら対応日本語記事なし〕


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彼/彼女の、彼(女)の、彼または彼女の、モノ (2) He/She; He or She; (S)he; His/Her; His or Hers; His (Her); His/Hers; His (Hers); His or Hers [文法問題]

『あしながおじさん』3年生6月10日の手紙の文法問題の続きです。前の引用を少し短くつづめておきます。―― 

You mustn't get me used to too many luxuries.  One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are his―hers (English language needs another pronoun) by natural right.   (Penguin Classics 105: 太字強調付加)
(わたしをあんまりたくさんの贅沢に慣れさせてはいけません。ひとはだれも、手にしたことのないものは、なくても不自由することはありません。でも、一度、これは生得権みたいに彼の――彼女の(英語という言語はもうひとつ代名詞が必要)――ものだと考えはじめたあとではそのモノなしにすごすのはすごくしんどくなります。) 

そして、前の記事「彼/彼女の、彼(女)の、彼または彼女の、モノ He/She; He or She; (S)he; His/Her; His or Hers; His (Her); His/Hers; His (Hers); His or Hers」に今朝追記したところから書き出します。

〔所有代名詞 one's が〕「あります*」「ありです*」、と書いたのは、文法書をひもといて確認したのではなくて、日本語ウィクショナリーの "yours" 掲載の表を見て、ふーん、あったのか、と思ったしだいです――<http://ja.wiktionary.org/wiki/yours> 。 でも「所有格代名詞」(これもうっかりそこからとりました)という呼称も「所有代名詞」という書き方とのあいだで揺れていますし、信頼できるかどうか不安になりました。

  つまり one's の所有代名詞をウィクショナリーはあるといっているけれど、どうも信用できかねるという感じがしました。そして、朝から文法書(江川泰一郎の)を探しているのですが、見つからず、しかたがないのでWEB であれこれと眺めたり OED などの辞書をあらためて引いたりしました。

  まず、学習辞典として信頼できる研究社の英和中辞典を見てみたら、its と one's については代名詞の形容詞的な所有格としてはとりあげていますけれど、his とはちがって「所有代名詞」としての用法を記していません。

  ネット上に硬軟いろいろある英文法サイトのなかでは、『自由学芸堂英語――自由にマナブ人のための実践教養英語ハンドブック』の「代名詞」のページ <http://manabu.s15.xrea.com/english/chapter04/pronoun.html> は、「所有代名詞」の項で、つぎのように解説していました。――

所有代名詞は、「…のもの」という所有物を単独に表現する語です。 所有代名詞には、mine(例文1), yours, his, hers, ours, yours, theirs があります。 it に対する所有代名詞は存在しません。 所有代名詞はすべて第三人称として扱います。

  it に対する所有代名詞はないぞ、としています。one, one's  については、そもそも1人称から3人称までの人称代名詞のなかに入れていないので、言及がありません。

  「所有代名詞」は英語だと "possessive pronoun" です。英語のウィキペディアの "Possessive pronoun" <http://en.wikipedia.org/wiki/Possessive_pronoun> を見ると、現代の英語に所有代名詞は、"its" も入れて 7個、そして古い2人称の thine もある、と書かれています。――

There are seven possessive pronouns in modern English: mine, yours, his, hers, its, ours, and theirs, plus the antiquated possessive pronoun thine (see also English personal pronouns). The word its is, however, rarely used as such (almost always it functions as a possessive adjective). (現代英語には7個の所有代名詞がある――mine, yours, his, hers, its, ours, theirs。それプラス古い所有代名詞の thine がある。しかし、 its は所有代名詞として用いられることは稀である(ほとんどつねに所有格の形容詞として機能する)。

  英語のほうの Wiktionary の "its" <http://en.wiktionary.org/wiki/its> を見ると、 pronoun (代名詞) としての用法の説明が用例とともに、なんかまだるっこい言葉遣いで書かれています。――

Pronoun

its

Its is extremely rare as a pronoun, the pronoun it being very rarely stressed. Moreover, there is very rarely need for Its as a possessive pronoun. (its は代名詞としてはきわめて稀。それは代名詞 it が強調されることがきわめて稀だから。そのうえ、所有代名詞としての its の必要はきわめて稀にしかない。) 

The mind has its reasons and the heart has its.

  そして、Wiktionary の "one's" <http://en.wiktionary.org/wiki/one%27s> を見ると、いちおー pronoun として挙がっています。でも説明が its のほうの説明と響きあっていない、とてもあいまいな記述です。――

Pronoun

one’s

  1. belonging to one

  これだけで用例はないです。これって ("belonging to one" って名詞句じゃないよ)、形容詞的な使い方(my とか your とか her みたいな)じゃないの? と思えるのですが、"Usage notes" のひとつめには "Unlike all other possessive pronouns (yours, hers, yours) one’s is spelled with an apostrophe. " と書かれています。(「one's - ウィクショナリー日本語版」 <http://ja.wiktionary.org/wiki/one%27s> )も参照(リストつき)。

  OED を見ると、its は "its, poss. pron." として、A は形容詞的な使い方で、"As adj. poss. pron. Of or belonging to it, or that thing (L. ejus); also refl., Of or belonging to itself, its own (L. suus)." と記述しています――つくづく思うのですが、「代名詞」とか pronoun とか possessive pronoun とか adjective (形容詞)  とか、文法家によって範疇が違いうる、あるいは捉え方が異なりうる、ので、誤解が生じうるのではないかと思われ。adj. poss. pron. というのは adjective possessive pronoun ですから、「形容詞的所有代名詞」なんすかねー。ともかくこの A はふつうの使い方というか、1834年の用例だと "The Gospel has its mysteries." みたいなやつです。

  そして B は独立用法 (absol.) で、つぎに名詞 [n.= noun]がつづかない場合 ("used when no n. follows")で、意味は: Its one, its ones.  そしてラベルは rare. 稀。用例は17世紀はじめのシェークスピアひとつしかないです。――Each following day Became the next dayes master, till the last Made former Wonders, it's. (Henry VIII, 1.1.18 [First Folio])  なんか、全体が古くて、そもそも its じゃない(笑)。まー、これでも現代英語 (Modern English) ですけど。いまの英語 (present-day English といったりする)にすると、 Each following day became the next day's master, till the last made former wonders, its.  でしょうか。むつかしー。

  このシェークスピアの用例から検索して知った、堀田隆一というひとの、英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログ hellog の2009年11月10日の記事「#197. its に独立用法があった![personal_pronoun]」によると、対比表現のなかに限られるようだ、とのことです。――

〔・・・・・・〕「それのもの」という表現は確かに他の性や人称に比べれば使用頻度が少ないように思われるが,its という限定用法がありながら,独立用法が欠けているのは,体系として欠陥であるといわざるを得ない.
 しかし,驚くなかれ,この its には非常にまれながら独立用法が存在するのである.あまりに稀少なので屈折表のなかに取り込まれていないだけで,「あり得ない」わけではないということを示しておきたい.ただし,its が独立用法として使用されるのは,対比表現に限られるようである.〔・・・・・・〕<http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~rhotta/course/2009a/hellog/2009-11-10-1.html>

  まー、驚きはしなかったのですがw、なるほどね。で、堀田さんによると、「対比としてでなければ使用できないのでは,やはり屈折体系に納めることはできないということか」。屈折 (inflection) 体系というのはくだいていえば I my me mine みたいな変化のリストです。

  さて、one's はいかに? いちおう確認しておくと、one は someone とかも含めて「不定代名詞」という範疇に入れられ、「人称代名詞」の中に入れられないのがふつうのようです(one って3人称じゃないの?といいたいとこですが。ついでに書いておくと、一般の you (generic you) という「2人称」がありますが、これって one とどうちがうん? というのがわたしも含めてしろうとの疑問としてありますねー。ちなみにウィクショナリーは「汎称代名詞」ということばで one を呼んでいます。「4人称」という4次元的なコトバで不特定のヒト・モノを指す代名詞を呼ぶこともあるようですがわけわからんです。おそらく、one といっても3人称の対象だけでなく相手 (second person) も入ったり、あるいはワタシ (first person) のかわりに one を使ったり、それは generic you の場合も似たところがあり、1,2,3に特定できないから不定なんだろうと思うんですけど・・・・・・)。 OED を見ても用例は見つかりませんでした。英語史に関する話題を広く長く提供し続けるブログ hellog で検索しても見つかりませんでした、残念なことに。

  それで、最終的結論は先送りなのですけれど、たぶん、ということで適当に〆ておきます。たぶん、ジュディーは、one's の「独立用法」がないことを英語の問題として言っているのでしょう。もう一度書くと、つぎのような文が認められない、ということです。――

One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are one's.*

    自信まったくなし。

One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are his―hers (English language needs another pronoun).

     一般論としては、現在ならば his という男性中心の代名詞に対する反発から his/hers とか his or hers とか併記するか(主格の場合は he/she, he or she に加えて (s)he みたいな書き方もあり)、あるいはいわゆる "singular they" を使って、論理的には単数であるのを承知で男女両方を指す(あるいは性にこだわらない) 複数形の they を使う習慣が、いちぶ識者(?) のあいだでは1980年代くらいから流行ってきました。前者についてはもってまわった感じが鼻につきますし、後者は単数・複数がズレルところがいやだなー、ということで、全面的に受け入れられてはおらないようです。後者の they については、もっとも上の文だと、その前の things を受けた they とぶつかってしまい (they are theirs) 、何がなにやらわからない文章になってしまいそうです。

  「人称」というのは「ヒト」じゃなくても person だという感覚が日本語的にはおかしくて、そのへんマヒさせて、学術用語として受け入れているところがおそらくあって、そのへんもわけのわからなさを増幅する要因のひとつになっている気がします。なにしろ神の3つのペルソナ――父なる神(聖父)、子なる神(聖子)、聖霊なる神(聖霊)――も person ですから、どうにも実感的につかみづらいです。

  そして、ジュディーの文章で少なくとも表面的に問題になっているように見えるのは、いわゆる「人称」――1人称、2人称、3人称――ではなくて、ジェンダー(性差)の問題です。けれどもそう見えるだけで、ジェンダーの問題を問題にしているのではないのかもしれない。でも one/one's の英文法問題から発展して問題にしているのかもしれない。そのへんがおもしろいのでした。うわー、解答出てないや。

  まじめに「英語に必要なもうひとつの代名詞」を考えると、複数形の they は "gender-neutral" です。単数形で gender-neutral な代名詞としては it しかない。しかし it は無生物しか原則的には指せません(赤ん坊とか、物語内で性別不明の段階で声の主とかを it で指すことはあるけど)。そうすると、必要なのは one's の所有代名詞化ではなくて、ヒトを指す gender-neutral な単数形代名詞ということかもしれません。

  〔21時50分追記〕しつこく書くならば――、前の記事で、ふたつ可能性みたいなことを書きました。

a)  his と書いたけど、hers というもうひとつの ("another") 代名詞が必要とされる。

b)  his と書き、hers と書かねばならないのは不便なので、もうひとつ別の、これとちがった ("another") 代名詞が必要ではなかろうか。

  うーんと、b´) というか、

c)  one は男も女も(あなたも彼もワタシも)一般論的に指せると思って書き始めたけれど、所有代名詞で詰まってしまい、his―hers と書かざるを得なかった。英語はもひとつ別の――one ではない――代名詞が必要だわ。

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"Gender-neutral pronoun," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/He/she> 〔残念ながら対応日本語記事なし〕

"Singular they," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Singular_they> 〔残念ながら対応日本語記事なし〕


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希望(という名)の光 A Ray of Hope [文法問題]

山下達郎がひさしぶりのアルバム『Ray of Hope』を出して、プロモーションにいろいろな番組にでている今日この頃。モーリちゃんの父がよく聞いているTBSラジオでも、先週、大沢悠里のゆーゆーワイドを聞けなかったのは残念だけれど、日曜日の朝の久保田智子のプレシャスサンデーでのインタビューは2週にまたがる長いもので、アレコレ話が脱線しておもろかった。おじさん、話し好きなのね。

  「・・・・・・癒しとか、包まれる感じが、アルバム全体にあるんだなあっていうふうに感じました。」

  「厳密に英語的な表現では、"a ray of hope" だと、ほんとに一すじの光なんですよ。だから絶望のなかにほんとに見える一すじの光のことを "a ray of hope" という。ほんとは "A . . ." にしたかったんだけど、日本語のアルバムなので、"a" をつけるとちょっとうるさいんですよ。で、"a ray of hope" という表現だと、天から降ってくる、雲の間から漏れてくる、バーって光があるでしょ、そういうものをだいたい "a ray of hope" と表現するんですよね。宮沢賢治の詩のなかに、空から雲のあいだから光の束が降りてくる、宮沢賢治はそれを「空のパイプオルガン」って表現していたけれど、そういう雲の間の、日本でもよく見るけど、"a ray of hope" っていうとだいたいそれくらいの感じなんです。ちょっとそういう宗教的な表現になりますけど。だからほんとは "A Ray of Hope" のほうがいいんですけど・・・・・・」

  ほかのところでも同じようなことを語っている――山下達郎さん サンデーソングブック 2011年08月07日『Ray Of Hope 』Part2」。〔8.16付記 まちがえてました。2011年8月5日bayfm 「Answer」です。小島麻子の「Ray Of Hopeという単語自体は、いつ頃から・・・」という問いに対してこう答えています――「宗教的な意味で言うと天から降って来る光の束とか、そういうようなものがRay of hopeって言いますね。だいたい、希望の光って、全く同じ意味だと思います。そういう曲はたくさんあります。特に宗教歌では沢山でてきます。」〕

  "a ray of hope" がほんとうに宗教的な表現なのかわからんけれど――達郎が好きらしいラスカルズの "A Ray of Hope" (1968年; 邦題「希望の光」)は主 Lord にむかって呼びかけていたっけ。あー、1年前の4月に「希望という名の光」のシングルCDが出たときに達郎自身が「そういった話を突き詰めていくと宗教観になってくるんだけど……。クライマックスのコーラスで歌っている“A Ray Of Hope”というフレーズは、アメリカのゴスペル・ミュージックでよく使われる言葉なんです。」と語っておったのね(映画『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』の主題歌『希望という名の光』を4月14日にリリースする山下達郎さんをフィーチャーした「Amazon.co.jp: Deep Dive」)。

  以上で前説おわり。

  ちょっと興味深かったのは、なるほど宗教的な感覚があるならば、「光」は啓示や知識の訪れの視覚的イメジとして伝統的にあったのだろうけれど、ひとつには「希望」と「光」の比重が逆転しているようなところが気になったのでした。

  えーと、文法問題的に捉えるべく、辞書の記述を列挙してみましょう。――

"a ray of hope" 「希望の曙光(しょこう)」(『ランダムハウス英和大辞典』

"a faint ray of hope" 「一縷(いちる)の望み」(『研究社英和大辞典』

"a ray of hope" 「わずかな希望、一すじの光明」 (『ジーニアス英和大辞典』)

"a ray of hope" 「一縷(いちる)の望み」(研究社『リーダーズ英和辞典』)

  ray は「光」というより「光線」です。『ジーニアス』は "a ray of moonlight" に「月の光」という訳語をあてているけれど、moonlight は既に「月光」なわけで、その月光がなんらかのかたちで――暗い部屋に射し込むなり、雲間から漏れ出るなり――部分的に可視化された場合が "a ray . . ." として表現される。

  さて、『ジーニアス』だけは(ふたつめの訳語として)「一すじの光明」というふうに、「希望」でも「望み」でもない日本語に置き換えているけれども、ここで「光明」というのは、念のために広辞苑の記述を引いておけば、②にあたります。――

①明るく輝く光。「一筋の」  ②比喩的に、苦しい状況での、将来への明るい見通し。「前途にを見出す。  ③仏・菩薩の心身から放つ光。智慧や慈悲を象徴する。

  (①の用例に「一筋の光明」とあっても、あくまでも②ですw。)

  希望というのは光っているモノではないのですから、英語の ray もまた、「比喩的」に使われているのだ、と言えます。

  山下達郎が日本語のタイトルを「希望の光」ではなくて「希望という名の光」とした意図はよくわかりませんけれど、The Rascals の「希望の光」と変えたかった以外には、歌詞としての語呂ならびに歌詞の他のフレーズとの関係があるのかと思われます――「自由という名の風」「勇気という名の船」「愛という名の絆」――「希望という名の光 山下達郎 歌詞情報 - goo 音楽」。

  ううむ。「愛という名の絆」はわかるけど、あとの「自由という名の風」とか「勇気という名の船」とかいうのはわかりませんね。

  わからんところがおもしろいのかも。

  えーと、たぶんこの詩(歌詞)のなかで考えるとなんか解決しそうな気もしますけど、もともとの興味深いと思ったところに戻ると、「希望」の比喩として「光」が抽象的に引き込まれているのではなくて、むしろ具体的なイメジとして光があって――山下氏が繰り返すことばをもちこんでしまえば、天から射す光というイメジがあって――それに希望が重ね合わせられているところです。だから、直喩的に言い換えるなら、「一すじの光のような希望」なのではなくて、「希望のような一すじの光」という感じ。

  英語で「比喩のof」と呼ばれる表現があるけれど―― "a beast of a man" (獣のような人)とか "silver pepper of stars" (「銀のコショウのような星々」――『ギャツビー』)――A of B の関係が入れ替わって主客転倒しているような感じ。

  敢えて広辞苑に重ねるなら、③の宗教的な「光」の「象徴」が比喩に先行しているということかな。そこが「自由という名の風」とか「勇気という名の船」とは違うところでしょうか。

The-Rascals-A-Ray-Of-Hope-410932.jpg
image via 991.com <http://991.com/Buy/ProductInformation.aspx?StockNumber=410932&PrinterFriendly=1>

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歌謡曲歌詞検索 Search Engines for Japanese Pop Music [2011/02/21 21:26]

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名もない Nameless [文法問題]

昨年の8月から見ないままたまっていたNHKの大河ドラマ『龍馬伝』を今日ようやく見終わった。 

  「完」のあとの最後の「龍馬伝紀行」(女性アナウンサーがゆかりの墓所や史跡を語る数分のオマケ)の結びのコトバ――

幕末。新しい時代の扉を開いたのは、龍馬や弥太郎のような、志を抱いた、名もなき若者たちでした。それは、わずか150年前のことだったのです。

  (守本奈実アナウンサーの語りは、ゆっくりまったりしているので、句読点は間違っているかもしれません。WEBでググると「幕末、新しい時代の扉を開いたのは、龍馬や弥太郎のような志を抱いた名もなき若者たちでした。それはわずか150年前のことだったのです。」というのがもっぱらのようです。)

  「名もない」という現代文文体ではなくて「名もなき」としているのは、まー、演歌とか漫画とかで、型にはまった情緒的なフレーズを好む作家にしばしば見られるものでしょうか――「哀しきトランジット・エイジ」(「トランジット・エイジ」)とか「蒼白き頬のままで」「名も無き星たちよ」「夢を追い続けるなり」(「昴―すばる」)とか・・・・・・「悲しきカンガルー」とか「悲しきあしおと」という洋楽の訳題もありました。なんとかいうゴルフ漫画の語り的文章とか。あ、テレビ朝日見ていたら、『BALLAD 名もなき恋の歌』を放送するとか・・・・・・ううむ、これは「BALLAD」は題名ではないと表示しつつ「BALLAD 名もなき恋の歌」という名の歌(映画)だということを指示しているのでしょうか。・・・・・・ともあれ、いまここで古語的ないし漢語的いいまわしの情緒性・浪花節性を議論するつもりはなく、かねて英語でも気になっている「名のない」という表現の曖昧さについてメモっておきたいのです。

  ○名もない  人があまり関心を示さず、名前の知られていない。ごく普通の。無名の。「花」 (『広辞苑』)

  ○なもない【名も無・い】  有名でない。名前を知られていない。「花」 (『明鏡国語辞典』)

  「龍馬や弥太郎のような志を抱いた名もなき若者たち」と書くと、「龍馬や弥太郎の(抱いた)ような志を抱いた、(龍馬や弥太郎ではない)名もなき若者たち」と読めるかもしれません。「龍馬や弥太郎のような、志を抱いた、名もなき若者たち」というのは、龍馬や弥太郎={志を抱いた・名もなき}若者たちという関係です。これは文脈でも確認されるところで、自信あります。「名もなき若者は、そのとき龍になった」ということばがブログやツイッターで散見されますし。

  そもそも、調べてみると、NHKによる出演者発表を告げるNHK自身のブログ 2009.7.14で「名もなき若者は、その時「龍」になった―大河ドラマ「龍馬伝」出演者発表!」と書かれておったのでした <http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/2000/23281.html>。「その時」がいつかはわからんし、その時「名もなき」から「名がある」に変わったのかどうかもわかりませんけれど、最後の守本奈実アナウンサーの(同じく)外枠的語りを信じれば、ずっと「名もなき若者」だったのでしょう。へんなの。

  そうすると、ドラマ冒頭から強調されているように「下士」(郷士)出身という、坂本龍馬や岩崎弥太郎の社会階層上の低さ、普通さをあらためて強調して「名もなき」と称しているのでしょうか。上に挙げたふたつの国語辞典で、なんとかあてはまる(でも違和感はやっぱりある)のは「ごく普通の」しかありません。

  なお、国語辞典で、「無名」というコトバはつぎのように記述されています。

む-めい【無名】 ①名を記さないこと。無記名。 ②名の分からないこと。「戦士の墓」 ③世間に名の知れていないこと。名高くないこと。「の歌手」⇔有名。 (『広辞苑』)

む-めい【無名】 〘名〙①名前がないこと。名前がわからないこと。また名前を記さないこと。「の草花」「投票」  ②名前が世間に知られていないこと。「の作家」 (『明鏡国語辞典』)

  さて、疑問を並べてみます。その一。なるほど、無名は有名の反対で、そのときの「名」というのは評判とか名誉とかいう意味なのでしょう(英語だとreputation とか。しかし「無名の草花」とは何か? 名前がわからない草花? ひるがえって「名もない花」(両方の辞典で用例に引かれている)とはやっぱり名前がわからない花? そのとき「名前がわからない」というのは、誰にとって? 「名もない花」と呼ぶ主体にとってでしょうか、それとも学問的に未知の花なのでしょうか。後者はほぼありえないでしょう・・・・・・新種発見。であるなら、自分が知らない・わからないからって「名もない花」などと呼ぶのはその人の思い上がりではないでしょうか(カルメン・マキ(寺山修司)のように「(野に咲く花の)名前は知らない」と言えばよい)。そこには、名もない人々との類推・投影によって、しばしば自分(人)と花とを同一化する気分があったりするのじゃないでしょうか。

  その二。ひるがえって、坂本龍馬や岩崎弥太郎みたいな歴史に残る有名人を「名もなき若者たち」と称するのはやっぱりヘンだ。そうでなければ文法的トリックかもしれない。「歴史は名もなき人々によって作られる」みたいなイデオロギーが透けて見えるんじゃないだろうか。

  (疑問じゃないけど)その三。英語の nameless は日本語の「名もない」「無名の」と複数の語義において通じるところがあるでしょう。でも「無名戦士(兵士)」というのは英語だと the Unknown Soldier (これは1920年代からのアメリカの言い方で、イギリスだと the Unknown Warrior)です(名前のわからない兵士の遺体を代表するのがこの大文字の表現。小文字で個々の無名兵士を指すこともあるけど)。日本語の「名もない」戦士的なイメジとは違います。あくまで身元不詳ということです。いっぽう nameless grave というと「無縁塚」みたいな感じかしら。これは墓に名前がないのであって、人に名前がないのではないです。ところで東京港区の青山墓地には〔解放運動〕無名戦士墓というのがあります。ここに入っているので有名なのは『女工哀史』を書いた細井和喜蔵でしょう。「無名」性についての思想がやっぱりあるんじゃないかと思われます。

  で、このごろ書いていること(もとは「希望という名の光」)に無理やりつなげると、日本人ならびに日本語は「名」を嫌いつつ好きだなあ、みたいな。

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【東日本大震災】 カンヌ映画祭開幕 名もなき無数の魂に捧ぐ 2011.5.13 <http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110513/ent11051307550008-n2.htm> 〔MSN三系ニュース〕

解放運動無名戦士の墓とは? <http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-04-15/12_01.html>


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~に対する危険性が高くなっています A [The] Danger [Risk] of [for, against] . . . Is Increasing [文法問題]

昨日の夜のNHKのニュースのなかの気象情報で気象予報士(ちなみに女の人だったけど、彼女の作文というのではないだろう)が何度も繰り返していて耳についたコトバ――

土砂災害に対する危険性が高くなっています。

  この不思議な、もってまわった、翻訳口調の、日本語はなんなのだろう。「土砂災害の危険が高くなっています」という言い方ではだめなのだろうか。

  「翻訳口調の」とわざとらしく書いたけれど、「に対する」は英語だと against なのかなー、for なのかなー。わからないけど、自分の日本語の感覚だと、「対する」という言葉は、対象を示すのだから(これは for も against も同じかもしれない)、危険でいうなら危険の及ぼされる対象(客体)となるものとくっついて「人体に対する危険(性)」とか、「環境に対する危険(性)」というのがまっとうな使い方であって、危険を及ぼす主体にくっつくものではない。

  でも、WEBで検索するとNHK同様の表現が目につくのでした。――

0.  閣僚宣言「児童ポルノ犯罪者によって脅かされる児童に対する危険性」 <http://www.moj.go.jp/hisho/kokusai/g8_2009_07.html> 〔法務省:閣僚宣言 (これは「仮訳」と書かれていて、イタリア語から日本語に戻したものみたいだけど、日本語全体がおかしい〕

1.  「故高木仁三郎さんが「福島原発」の津波に対する危険性を16年前に予言していた」 <http://matoshorseracing.blog.so-net.ne.jp/2011-05-08>

2.  「日本ではヘディングに対する危険性が全くと言っていい程認識されていません」 <http://qa.fresheye.com/qa/view.php?qid=1158034936&kw=%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%AD%A6> 〔「ヘディングの危険性に対する認識」ならわかる〕

3.  「施工による風荷重に対する足場の危険性評価環境シミュレータ」 (pdf.) <www.jniosh.go.jp/publication/SRR/pdf/SRR-No26-04.pdf> 〔「足場の倒壊に対する危険性が高い」とか〕

4.  「都市の災害に対する危険性を明らかにし、広く知らせることが防災都市づくりの第一歩です」 <http://www.mlit.go.jp/crd/city/sigaiti/tobou/kikendo.htm> 〔国土交通省の「都市災害危険度」 もっと日本語を練れよ、という文章・・・・・・「都市災害」の危険性なのか、災害における都市の危険性なのか、わけわかわからん――さすがに都市が災害に対して害を成すとは思われませんが、それは思われないだけで、構文上は、そう読めもする〕

5.  「減塩運動が始まった当時には,減塩に対する危険性はないと考えられていたが」 <http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt7/salt7-seawater-health2.html> 〔「塩と健康(2)減塩に降圧効果はあるのか? また減塩は可能であり,危険性はないか? Salt and Health (2) Does Salt Restriction Have Any Antihypertensive Effects? And Can Everyone Restrict Salt Intake without Deleterious Risks?」 『日本海水学会誌』54-1 (2000)〕

  その他いろいろいろいろ。

  なんでも「の」で済むと思っているわけではないです、もちろん。「の」は曖昧だし、個別の文章内で「の」でよかったり悪かったりする。しかし、意味を明確化するかと思われる言葉遣いが、逆に意味を曖昧にしているという事態は、馬鹿としか思われません。

  そして、こういう言葉遣いが好まれること――もってまわった翻訳調の日本語(坂口安吾が「ペルシャ語」と評した日本語)を好む学術的な場においてだけでなく、ふつうの人からも好まれること――は問題だと思う。(「危険性」と「性」が付いているからじゃないの?という疑問が聞こえてきそうだが、確かに「性」はそれ自体、日本語において大きな問題をはらんでいます――おそらく科学的学問性みたいな嗜好・指向・思考と「ナントカ性」という表現を好む気分はつながっていて、とりわけここ数十年に多くなっている感じがする。でも「性」の問題を除いても残る問題はあるのだ)。

  それは、「希望の橋」でなくて「希望という名の橋」と呼ぶ感覚、あるいはそう呼ぶ感覚をよしとする感覚、逆に、なにも感じなかったりする無感覚、とどこかでつながっているような気がするのです。

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image via JAF | 地域情報 | お知らせ <http://jafevent.jp/event_info/area_info/index.php?From=detail&contribution_id=12766>  ――潜んでいるのは子どもなのか、危険性なのか?


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テクストと文法問題 Textual and Grammatical Problems [文法問題]

ひさしぶりに他人のブログをのぞいていたら、『赤毛のアン』の引用でつぎのような英語があった。――
Even Josie Pye came to see me. I received her as politely as I could, because I think she was sorry she dared me to walk a ridgepole. If I had been killed she would had to carry a dark burden of remorse all her life. Diana has been a faithful friend. She's been over every day to cheer my lonely pillow. 〔太字強調付加〕

"would had" はねーべさ、とコメントで指摘してやろうと思ったが(←イヤなおやじw)、念のため調べてみることにした。   

  まず、文法問題を扱ったQ&Aのページ(DailyWritingTips)から――

Rita Levin asks: Can you please explain the difference between could had/could have and would had/would have.

To begin with, the combinations “could had” and “would had” are impossibilities in standard English. It was with great dismay that I found the following utterances (and many more like them) on the web:

If I had been killed she would had to carry a dark burden of remorse

If Greece and Greeks would had been converted to islam… would Greece had the problems of debt currently?

Encore could had been a masterpiece

If you could had $100 GC at Amazon, which cans for Rock music would you get?

The combination could have is always followed by a past participle.

 NOTE: This discussion is limited to the use of have and had with could and would.  〔"Could Have and Would Have," DailyWritingTips〕<http://www.dailywritingtips.com/could-have-and-would-have/>

  リタさんの質問がありえなく間違っているという悲惨な始まりなのだけれど、回答者はていねいに説明を行ないます。実際にWEBに同様の "could had" とか "would had" を見つけて愕然としたという例の最初のが、典拠が示されていないけれども、『赤毛のアン』なのでした――"If I had been killed she would had to carry a dark burden of remorse"。   

  そして、回答者は解説(内容として、「過去の推測」的記述の問題を含んでいて興味深いのだけれど、今回の話とは別筋なので省略)を経て、"incorrect examples rewritten" と直しを入れます。――

If I had been killed, she would have had to carry a dark burden of remorse

If Greece and the Greeks had been converted to Islam…would Greece have the current problems of debt?

Encore could have been a masterpiece

If you could have $100 GC at Amazon…

  まあ、まことに至極もっともなことであり、文句のつけようもありません。   

  そして、テクスト問題として見つかったのが、まずグーグル・ブックスなのでした。 Forgottenbooks-AnneofGreenGables-google.JPG   

  つまり、一般市民個人の写し間違いというのではなく、プロがつくった本の段階で誤りがあったようなのです。このリプリント版を作って売っているのはForgotten Books です。この本屋はもっぱらE-text を使った本を作っており、しかし紙にしないE-text の状態で無料でWEBに出してもおり、カリフォルニアにいたときにアマゾン経由で英国民謡5巻本を買って、その無意味さに怒って返本した、本屋でした。   つづく


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ジョン・ジェイ・スミスを探して (1) Going after John Jay Smith [文法問題]

前の記事「ポーが書評した本 (14) 『万国著名裁判』 (1835) Books Reviewed by Poe (14): _Celebrated Trials of all Countries_ (1835)」 [ポー の書評 Poe's Book Reviews]で、名前が出たジョン・ジェイ・スミス。ポー学者のポーリンは、「フィラデルフィアの法曹界のひとり」という匿名の著者を [George H. Borrow] と補っているのだけれど、Internet Archive はこぞって John Jay Smith (1798-1881) を著者としていたのでした。名前が司書か本屋かによって書き込まれた本もあります。――

CelebratedTrials(1836).jpg
Rpt. Philadelphia: Godey, 1836

  ジョン・スミスというと『あしながおじさん』のつながりであれこれ〔「ジョ ン・スミスという名前 John Smith」「ロング・レッグズ船長、ジョン・スミス船長、ジョン・シルヴァー船長 Cap'n Long-Legs, Cap'n John Smith, Cap'n John Silver」「ジョ ン・スミスの『海の文法』 (1627) A Sea Grammar by John Smith (1627)」など〕書いたように、ありがちな名前なわけですけれど、ジェイが付いてるし、とりあえず調べてみようかと思いました。

  で、まず、Wikipedia がらみで目に留まったのは、本人ではなくて、Robert Pearsall Smith というフィラデルフィアの人。

Robert Pearsall Smith (1827-1898) was a lay leader in the Holiness movement in the United States and the Higher Life movement in Great Britain. His book Holiness Through Faith (1870) is one of the foundational works of the Holiness movement. He was also a businessman in the Philadelphia area, publishing maps and managing a glass factory.<http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Pearsall_Smith>

  Holiness movement と Higher Life movement のリーダー(といっても、アメリカの、かつ "lay" 庶民の、民間での、という形容辞が付いてますけど)のひとりだったのね。〔「ホーリネス運動」のウィキペディア記事はもっぱら日本での「きよめ」派の系譜が書かれていて、興味深いです。〕 

  そして、記事本文に入って、Early Life の冒頭に父親の名前がJohn Jay Smith と出てきます。――

Smith,RobertPearsall(Wikipedia).JPG

   ロバート・パーサル・スミスはジョン・ジェイ・スミスとレイチェル・パーサルの息子。家系はペンシルヴェニア州とニュージャージー州の有力なクウェイカーの長くつづく家柄で、彼は、フィラデルフィアで最初の保険会社を創始し、フィラデルフィア病院の創設者のひとりであったジョン・スミスの子孫であった。

  John Jay Smith は青字になっておらず、ウィキペディアの記事はないのでした。

  で、急遽、文法問題ですが、"Descended was from" はおかしいですねー。たぶん分詞構文(過去分詞構文)で、主節は "he was a descendent of John Smith . . . " なのでしょう。あるいは倒置で、 "Descended was he from" という気持ちだったと言えなくもないと思う人もいるかもしれないが、だとすると、he の前に and とか接続詞が必要になりますから、やっぱり分詞構文で、にもかかわらず was が残ってしまった、か補われてしまった。

Robert Pearsall Smith was the son of John Jay Smith and Rachel Pearsall. Descended was from long line of influential Quakers, in Pennsylvania and New Jersey, he was a descendant of John Smith, who started one of the first insurance companies in Philadelphia and was one of the founders of the Philadelphia Hospital. 

  それにしても descended と descendant は意味が重複 (redundant) しているから、へたくそな文章です。それにJohn Smith が出てくるまで、その長い家系というのがどっちなのか(Smith なのか Pearsallなのか)わからないのもよくなく、「スミス家は・・・・・・」と書くべきなんじゃなかろうか。


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