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日本的霊性につきて (5) 日本的霊性 (鈴木大拙) "On Japanese Spirituality" by Suzuki Daisetsu [魂と霊 Soul and Spirit]

承前―〔日本的霊性につきて (4) 霊性と宗教意識 (鈴木大拙) "On Japanese Spirituality" by Suzuki Daisetsu

       5  日本的霊性

  上来の所述で、霊性は何を意味するかが大体においてわかると思う。それと精神との概念分野もいくらか明らかにし得たであろう。更に、宗教意識の覚醒は霊性の覚醒であり、それはまた精神それ自体が、その根源において動き始めたということになるのだとの義も、いくらか明らかにし得たであろう。霊性は、それ故に普遍性をもっていて、どこの民族に限られたというわけのものでないことがわかる。漢民族の霊性もヨーロッパ諸民族の霊性も日本民族の霊性も、霊性である限り、変ったものであってはならぬ。しかし霊性の目覚めから、それが精神活動の諸事象の上に現われる様式には、各民族に相異するものがある、即ち日本的霊性なるものが話され得るのである。

  それなら霊性の日本的なるものとは何か。自分の考えでは、浄土系思想と禅とが、最も純粋な姿でそれであると言いたいのである。それはなぜかと言うに、理由は簡単である。浄土系も禅も仏教の一角を占めていて、その仏教は外来の宗教だから純粋に日本的な霊性の覚醒とその表現ではないと思われるかも知れない。が、自分はだいいち仏教を以て外来の宗教だとは考えない、従って禅も浄土系も、外来性をもっていない。なるほど仏教は、欽明天皇時代に渡来〔とらいに傍点〕したという。しかし渡来したのは、仏教的儀礼とその付属物であった。それ故、そのいわゆる渡来は、日本的霊性の喚起というものを伴っていない・当時それを受入れるについて闘争があったというが、それは政治性〔せいじせいに傍点〕をもったもので、日本的霊性そのものとは没交渉〔ぼつこうしょうにルビ〕である。それから仏教は建築およびそのほかの芸術および科学の方面に働きかけたというが、それも日本的霊性の問題ではなくて、大陸文化のそれぞれの方面の取入れである。日本人の霊性はまだ動きださぬ。仏教とそれとは生きた関係をもっていない。仏教の働きかけで、日本民族のあいだに本当の宗教的意識が台頭して、その表現が仏教的形態を取っても、それは歴史的偶然性で、日本的霊性そのものの真体は、この偶然なるものを突き通して、その下に見出されなければならぬ。

  神道〔しんとうにルビ〕各派が、むしろ日本的霊性を伝えていると考えてもよかろうか。が、が、神道にはまだ日本的霊性なるものがその純粋性を顕わしていない。それから神社神道または古神道などと称えられているものは、日本民族の原始的習俗の固定化したもので、霊性には触れていない。日本的なるものは余りあるほどであるが、霊性の光はまだそこから出ていない。霊性が十分あると思う人もないでもないようだが、自分等の見るところでは無いと言いたい。霊性の問題は、ある点では、組織を許さぬところがあるので、いわゆる水掛け論に終ることがある。それで困るのであるが、「相い罵る〔ののし(る)にルビ〕ことは你〔なんじにルビ〕に饒〔ゆる(す)にルビ〕す觜〔くちばしにルビ〕を接〔つ(げ)にルビ〕げ、相い唾〔つばきにルビ〕することは你に饒す水を撥〔そそ(げ)にルビ〕げ」〔出典未詳・調査中〕で、これよりほかに仕方があるまい。

 

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『日本的霊性』 緒言 一 日本的霊性につきて・・・・・・1 「精神」の字義・・・・・ 2 霊性の意義・・・・・・ 3 霊性と文化の発展・・・・・・ 4 霊性と宗教意識・・・・・・ 5 日本的霊性・・・・・・ 6 禅・・・・・・ 7 浄土系思想・・・・・・ 8 禅と浄土系――直接性

 


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