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日本的霊性につきて (2) 霊性の意義 (鈴木大拙) "On Japanese Spirituality" by Suzuki Daisetsu [魂と霊 Soul and Spirit]

承前―〔日本的霊性につきて (1) 「精神」の字義 (鈴木大拙) "On Japanese Spirituality" by Suzuki Daisetsu

  えーと、あれこれ言わずに写経的作業を続けたいと念じております。日本人の大拙が「霊」ということを20世紀半ばに強く言うときに、伝記的には大拙が一時期いれあげていたエマニュエル・スウェデンボルグとの関係とかいいたがる人(日本人)がいるのはわかるけれど、日本には日本なりの「霊」学の伝統もあっただろうな、と思ったりもします(しばしば誤解される「古神道」の一霊四魂が、教説はともかく古神道自体は古くもなんともなくて新しいものであるというのは西洋のオカルトがしばしば「伝統」を唱導して「古来」を訴えるのと同様であるとはいえ、霊と魂は、少なくとも西洋のpneuma/psyche (ギリシア語)、spiritus/anima (ラテン語)、spirit/soul英語)の歴史的にはしばしば混同を引き起こした対語と類推的には存在してきたのでしょうから)。

  それでも、自我と自然とか精神と物質とか霊と肉とか、binary に二分・二元化するヨーロッパの伝統、その伝統に掉さすようで逆らったエマソンとか、ロマン主義を考えるうえでも、つぎの節は啓発的であると思われ(エマソンら、欧米の対抗文化的な思想伝統を「宗教という名で呼ばれない宗教」と呼んだのはセオドア・ローザクでした)。

     2  霊性の意義

  この見立てにたいした誤りがないとすれば、これから霊性とは何を言うのであるかを説き得べき順序にはいったと言ってよかろう。霊性という文字はあまり使われていないようだが、これには精神とか、また普通に言う「心」の中に包みきれないものを含ませたいというのが、予の希望なのである。

  精神または心を物(物質)に対峙させた考えの中では、精神を物質に入れ、物質を精神に入れることができない。精神と物質との奥に、いま一つ何かを見なければならぬのである。二つのものが対峙する限り、矛盾・闘争・相克・相殺などいうことは免れない、それでは人間はどうしても生きていくわけにいかない。なにか二つのものを包んで、二つのものがひっきょうずるに二つでなくて一つであり、また一つであってそのまま二つであるということを見るものがなくてはならぬ。これが霊性である。今までの二元的世界が、相克し相殺しないで、互譲し交歓し相即相入するようになるのは、人間霊性の覚醒にまつよりほかないのである。いわば精神と物質の世界の裏にいま一つの世界が開けて、前者と後者とが、互いに矛盾しながらしかも映発するようにならねばならぬのである。これは霊性的直覚または自覚によりて可能となる。

  霊性を宗教意識と言ってよい。ただ宗教と言うと、普通一般には誤解を生じ易いのである。日本人は宗教に対してあまり深い了解をもっていないようで、或いは宗教を迷信の又の名のように考えたり、或いは宗教でもなんでもないものを宗教的信仰で裏付けようとしたりしている。それで宗教意識と言わずに霊性と言うのである。が、がんらい宗教なるものは、それに対する意識の喚起せられざる限り、なんだかわからぬものなのである。これは何事についても、然か言われうると思われるが、一般意識上の事象なら、なんとかいくらかの推測か想像か同情かが許されよう。ただ宗教については、どうしても霊性というべきはたらきが〔はたらきに傍点〕出てこないといけないのである、即ち霊性に目覚めることによって初めて宗教がわかる。

  霊性と言っても、特別なはたらき〔はたらきに傍点〕をする力か何かがあるわけではないが、それは普通に精神と言っているはたらき〔はたらきに傍点〕と違うものなのである。精神には倫理性があるが、霊性はそれを超越している。超越は否定の義ではない。精神は分別意識を基礎としているが、霊性は無分別智である。これも分別性を没却了して、それから出てくるという意ではない。精神は、必ずしも思想や論理を媒介としないで、意志と直覚とで邁進することもあるが、そうしてこの点で霊性に似通うところもあるが、しかしながら霊性の直覚力は、精神のよりも高次元〔ちょっと個人的に気になるコトバ〕のものであると言ってよい。それから精神の意志力は、霊性に裏付けられていることによって初めて自我を超越したものになる。いわゆる精神力なるものだけでは、その中に不純なもの、即ち自我――いろいろの形態をとる自我――の残滓がある。これがある限り、「以和為貴〔和をもって貴しとなす〕」の真義に徹し能わぬのである。

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『日本的霊性』 緒言 一 日本的霊性につきて・・・・・・1 「精神」の字義・・・・・ 2 霊性の意義・・・・・・ 3 霊性と文化の発展・・・・・・ 4 霊性と宗教意識・・・・・・ 5 日本的霊性・・・・・・ 6 禅・・・・・・ 7 浄土系思想・・・・・・ 8 禅と浄土系――直接性


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