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『ニューイングランド初等教本』 The New England Primer [Marginalia 余白に]

『ニューイングランド初等教本 The New England Primer』 は、アメリカ建国の一世紀前の植民地時代1680年代につくられ、19世紀後半まで、地域によっては20世紀の1920年代まで使用された、初等教育用教科書です。

7月21日の「この本が迷子になっていたら (2) If This Book Should Chance to Roam [Daddy-Long-Legs]」で書いたように、『あしながおじさん』のなかでジャーヴィー坊ちゃんが10歳くらいのころに読んでいた本の扉に署名とともに書かれていた "If this book should ever roam,
Box its ears and
send it home." という注意書きの原型は、この古い教科書に所有者が書き込んできた韻文にあるのだと思われます。

この本の名前は学生の頃から知っていたのですけれど、なんか気になって、この夏に最近のリプリント版を買いました。サイズごと原書のままなのかどうか不明ですが、軽くて小さくて、バッグに忍ばせておいて電車の中や通りを歩きながら(金次郎かいw)読むには最適です。

New-EnglandPrimer.jpg

    ハードカバーだけど105グラムしかないです(さきほど計測)。大きさは、下の画像をクリックしてちょっと拡大されたものとほぼ等しいです。

NewEnglandPrimer,rpt.jpg

New England Primer: Improved for the More Easy Attaining the True Reading of English : To Which Is Added the Assembly of Divines, and Mr. Cotton's Catechism.  1777.  Rpt. Aledo, TX: WallBuilder Press, 1991; 11th Printing, 2009.  ISBN: 978-0-925279-17-0. 

   まあ、考えてみれば、1777年版は既に90年近く経っているわけですし、諸版あって、大きさは調べてみないとよくわかりません。

  いろいろリプリント版が出ているようなのですけれど、これが一番安かったので買いましたが、この、最近のリプリント版は、しかし、冒頭5ページだけ、David Barton というひとの短い序文的解説がついています。それで、いろいろと簡便に知恵がつきました。

  第一に、発音は「プライマー」ではなくて「プリマー」というのが正しい。第二に、1930年版というのが確認されている。それから、第三に、240年の歴史の中で、教科書の核心部分――(1) 韻を踏んだアルファベット〔これは上の画像の右側にあるような、"In Adam's Fall/ We sinned all." みたいな、絵入りのものです〕、(2) "An Alphabet of Lessons for Youth" 〔これは、アルファベットで始まる教訓的な内容の短文のリスト――"Better is a little with the fear of the Lord, than great treasure & trouble therewith." みたいな〕、(3) 聖書に関するQ&A、(4) 小教理問答 Shorter Catechism――はほぼそのまま踏襲されたということです。

  小教理問答と訳される Shorter Catechism は1647年の英国のWestminster 会議でつくられたふたつの教理問答のひとつですが(主に長老派 Presbyterianが使用したとされる)、これがそのまま教科書に入っているということの意義を、1843年版の New England Primer は次のように述べています(孫引き)。――

Our Puritan Fathers brought the Shorter Catechism with them across the ocean and laid it on the same shelf with the family Bible.  They taught it diligently to their children. [. . .]  If in this Catechism the true and the fundamental doctrines of the Gospel are expressed in fewer and better words and definitions than in any other summary, why ought we not now to train up a child in the way he should go?―why not now put him in possession of the richest treasure that ever human wisdom and industry accumulated to draw from?

  モーリちゃんの父は無知でした。20世紀の日本語の教理問答は、セクト違いでカトリックの公教要理とか図解とか何種類かもっていたのですが、初等教科書に編みこまれていたとはね。

  そうすると、たとえば魔女狩りの起こった1690年代のセイレムを舞台とするホーソーンの短篇「若いグッドマン・ブラウン Young Goodman Brown」 (1835) で、ブラウンが子供の頃に教理問答を教えてくれたなんたらいうおばさんが言及されるけれど、それは New England Primer を使用したものだったのね(それとも上の引用にあるように聖書と並んで本のかたちで印刷されていたのかしら――でも聖書を一般の家庭でもつようになったのはあとのことではないかと思われ)。あるいは、同じ年のポーの短篇「名士の群れ Lionizing」 で、鼻のでかい息子に父親が "what is the chief end of your existence" と問いを発するとき、それはShorter Catechism の第一の問い "What is the chief end of man?" のもじりであり、教理問答のほうの答え "Man's chief end is to glorify God and enjoy him forever." に対してポーの物語の語り手である息子は "it is the study of Nosology" と答えて、罰当たりなパロディーとなってることを、アメリカの読者は即座に看取したのね(かどうかはわかりませんが)。

WS000253.JPG

  ということで、初等教本で勉強中です。

 

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おそらく次の古い本が、Primer の資料としてすぐれているのではないかと思われます(少なくともE-text になっているものでは)――Paul Leicester Ford, ed.  The New-England Primer: A History of Its Origin and Development, with a Reprint of the Unique Copy of the Earliest Known Edition and Many Fac-simile Illustrations and Reproductions.  (New York: Dodd, Mead, 1897).


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