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『あしながおじさん』 Asa の謎 Asa Mystery [Daddy-Long-Legs]

『あしながおじさん』 (1912) を書いたJean Webster は、『続あしながおじさん』たる Dear Enemy を1915年に出版した翌年、満40になる前に亡くなってしまいますが、大学時代に創作を始め、24歳でヴァッサー大学(当時女子大)を卒業して作家としての独立を志し、1903年には在学中に書いた短篇をまとめた最初の単行本『パティーは大学へ行った』を出版しており、15年ほどの作家活動で、10冊足らずの本を書きました。いずれE-text とリンクしたリストをまとめようと思っておるのですが、日本語の訳書のなかには次のような著作年譜が見られます〔えーと、いちおう "The Four-Poors mystery"、"Four-Pools mystery (四つのプールの秘密)" と記されている作品のミステリーについては、カリフォルニア時間「June 30 Pg4のミステリー――本の電子化について――The Four-Pools Mystery by Jean Webster (1)」、「June 30 Pg4のミステリー――本の電子化について――The Four-Pools Mystery by Jean Webster (2)」、「June 30 Pg4のミステリー――本の電子化について――The Four-Pools Mystery by Jean Webster (補足)」、「July 19 ウェブスターの『フォー=プールズ・ミステリー』または本の電子化とテキストの正確性について――The Four-Pools Mystery by Jean Webster (続き)」を参照です〕。――

Asa.jpg

  1912年の Daddy-Long-Legs (『あしながおじさん』)と1915年の Dear Enemy (『続あしながおじさん』)のあいだにはさまっている著作。左の日焼けした文庫(昭和29年初版で、自分が持っているのは昭和52年2月の41刷)だと、

     Asa (a play)  1914年

です。右の昭和56年の本だと、

     一九一四年 Asa Caplay (エーザ=キャプレイ)

と書かれています。後者を見たのは最近で、思わず本をブン投げそうに、いやトリ落としそうになったのですが、上の "Asa" というのはまじめにしばらく考えていた時期がありました。

  アサ? アーサ? アサー♪ ・・・・・・それは谷岡ヤスジ〔リンク先の絵を参照〕。だじゃれじゃないか。だじゃれじゃない

  そして、調べてみると、1914年というのは、ウェブスター自らが小説『あしながおじさん』の脚本を書いて舞台に乗せた年だったのでした。さらに最近調べたところではヴァッサー大学の "Jean Webster McKinney Papers" (McKinney というのはWebster が結婚してあらたまった姓です)という資料の Box 12, Folder 5 には、この芝居に関する作者の文書が保存されているようです。ただし、まとまった脚本として残っているのか不明です。少なくとも公に刊行された形跡は見当たりません。

  だから、もちろん (a play) は「戯曲」の意味ですが、問題は Asa です。

  アサ? アーサ? 露光? だじゃれじゃないか。だじゃれじゃない

  ふつうに考えると "as a play" でひとつのまとまりのように思えるのですが、カッコのつきかたがいやはやなんとも。そして、どの資料や原稿やメモをもとにどこがどうしてそういう発想になったかは推断できませんが、右の本はカッコをCと取って、Caplay という新たなコトバをこしらえたのだと思われます。えー! えーかっこしー、みたいな感じでしょうか。だじゃれじゃないか。だじゃれじゃない

  Asa は、なるほど人名としてなら辞書に載っています。が、それ以外は噛み合わない意味しか載っていません。

  そして、この文庫は今もこの箇所を直していないのかどうかはわかりませんが、WEB 上には、この作品リストを掲げているページがあります。「ジーン・ウェブスター作品のページ」とか(他作品の翻訳情報があって参考になります)。

  そしてさらに調べてみると、実は日本の訳者以前にこのように記載している原書があったのでした。訳者はとりあえず、それをそのまま写したのでしょう。

WS000166.JPG
p. 19

     Daddy-Long-Legs, 1912.
        Asa (a play), 1914.
        Dear Enemy, 1915. 
    

    もっとも、おまけに未刊行の Pipes of Palestrina (an unpublished comedy) というのが付いています。しかし明確に "unpublished" と書かれているので落としたのではないか。

  この本は、1940年に初版が出たらしい Grosset & Dunlap 社のリプリント版で、冒頭に10ページほど無署名の "Introduction" が付されており、その中身は過去の雑誌記事の切り貼りだったりするところがあるようなのですが、綴り間違いが多いウェブスターに対して先生が、君は何を典拠 (authority = 権威)にしているのだ、と尋ねたところ「ウェブスター」と答えたというエピソードとかあれこれ訳者や研究者のネタになりそうなことが書かれている序文です。Webster というのは作家の名前であると同時にアメリカのたいへん標準的な歴史的に権威ある辞書(ならびにその編纂者)の名前であります。だじゃれじゃないか。だじゃれじゃない

  そうすると、 Asa は As above なのかなー、とか想像するのですが、自信はありません。ともかく Asa という芝居をウェブスターが書いていないのは事実です(わからんがたぶん)。しかし奇妙です。

WS000167.JPG
Jean Webster, Daddy-Long-Legs (New York: Grosset and Dunlap, Thrushwood Book, 1940[?]) <http://www.archive.org/details/daddylonglegs00webs>

  なんか既に19世紀末的な雰囲気はみじんもない表紙カバー絵なのでした。

WS000168.JPG

    copyright ページを見ると、1912年初版の出版社 The Century Company と並んで、1940年に "Jean McKinney Connor" の名が出ています。この人は、Jean Webster が亡くなる2日前に生まれた娘で、Ralph Connor というひと(ヴァッサー大の理事だったらしいです)と結婚してコナーが姓になりました。戦後、1977年に、ジーン・ウェブスターならびにマーク・トウェイン関係の資料をヴァッサー大学に寄贈したのはコナー夫妻です。

  イントロは娘さんが書いたのでしょうか。謎です。この本の初版が1940年かどうかも断定はできないのですけれど。Internet Archive の情報は1912年ともともとの年を書いちゃってますけれど、さすがにそれはない。しゃれにならないくらいない。

 


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